
人権についての責任は政府や国家にだけあるのではない。人権問題は個人と個人が作る組織の双方にとって重要である。グローバル・コンパクトに対するコミットメントの一環として、ビジネス社会には職場において、またより広い意味でその影響の及ぶ範囲において人権を擁護する責任がある。責任を持って行動することが道義的にますます避けられなくなってきた。このことは、人権擁護を推進することは企業の業績を向上させうるとの認識があるからである。
企業が人権問題に取り組まなければならない理由としては、以下のことがあげられよう。
◎ 国内法および国際法の順守企業は、最低限、その事業を営む国で適用される法的原則に反しない方法で事業を進めるように努力しなければならない。多国籍企業が国外で、利益のみを追求する慣行に対して、訴訟を検討する傾向が強まっている。
◎ 法の支配の促進国外で事業を進める企業は、人権問題に対する支持や実施が十分でない場合、その国で人権擁護活動を進め、人権基準を引き上げる機会を持つと言えよう。人権が尊重されるような社会はより安定しており、ビジネス環境が優れている。
◎ 消費者がもつ懸念の解消グローバルな情報にアクセスできるということは、消費者はその商品がどこから来て、どのような状態のもとで生産されたかについて知る機会が増えることを意味する。人権問題が発生する前に、人権状況の改善を図るプロアクティブなアプローチを採ることによって、消費者グループや利害関係のあるグループから、企業に不利な宣伝をされるという危険を軽減することができる。
◎ サプライ・チェーン・マネジメントグローバルな規模で原材料を調達し、製造するということは、企業が上流、下流の双方の潜在的な人権問題について十分に認識する必要があるということを意味する。人権に関する最善の慣行を促進することによって、企業は適切なビジネス・パートナーを選ぶことができよう。
◎ 労働者の生産性の向上とその維持労働者が尊厳を持って処遇され、その労働に対して公平かつ公正な報酬を与えられると、生産性が向上し、雇用者に対する忠誠心が高まることが多い。新規採用者はその就職活動の際に、企業が社会や環境にどのような貢献を行ってきたかを考慮することが多くなっている。
◎ 地域社会との良い関係の構築コミュニケーション技術の進歩によって、世界中の消費者はグローバルな事業を進める企業の実態について、より良く知ることができるようになった。人権問題に積極的に取り組むことによって、地域の共同体において事業を成功させることができるばかりか、より幅広いグローバルなレベルで一般の人々の支持を得ることができる。
人権を企業の政策や文化の中に取り込む
最初になすべきことは、たとえば世界人権宣言への言及をするなど、企業内の個人が人権問題についての理解を深めることである。同時に、事業展開を行っている国の現行の法律を尊重するとともに、地域の文化によって、これらの法律がどのように異なるかを明らかにすることが必要である。同じく重要なことは、人権の尊重を企業の中心的な価値観と文化に根付かせることである。
人権政策を策定し、実施するにあたっては、適切なガイドラインをすべて考慮に入れるとともに、可能であれば、関連のステークホルダー・グループと協議を行い、その提案や意見を取り入れるべきである。
人権をどのように企業政策の中に取り入れるかについては、以下のような方法がある。
最後に、企業が日常の活動を通していかに人権を保障することができかについては、以下のように多くの事例を挙げることができる。
(a) 職場において
(b) 地域社会において
(c) 最後に、もし企業がその事業を守るために警備に関するサービスを利用する場合は、武力行使に関する既存の国際的なガイドラインや基準を尊重しなければならない。
| (UNICによるグローバル・コンパクト10原則の日本語訳より引用) |