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持続可能な開発目標(SDGs)

SDGs達成こそがミッション~ミドリムシで「人と地球を健康にする」~

株式会社ユーグレナ

株式会社ユーグレナ

http://www.euglena.jp/

「SDGsへの取組み」をお尋ねするインタビューシリーズの締めくくりとして、株式会社ユーグレナ 代表取締役社長 出雲充様に同社のSDGsへの取組みについてお話を伺った。

ーこの度は、ご多用な中、インタビューのお時間を頂戴しまして、有難うございます。御社に関する資料や出雲様のご著書(「僕はミドリムシで世界を救うことに決めた。」(小学館新書))を拝読し、出雲様ご本人も、そして、創業から現在の事業運営においても、まさに「Passion(熱意)」であるとの印象を持ちました。このように Passionを常に持ち続けられる理由について教えて頂けますでしょうか?

実際、私自身、元気なときも落ち込むときもありますが、Passionを持ち続けていられるのは、グラミンバンクのユヌス氏という尊敬できる先生との出会いが一番大きい。ユヌス氏ほどの素晴らしい方がおられ、はるかに難しい仕事(マイクロファイナンスで約900万人に信用に基づいて融資し、人々の生活を変えた)を実現なさっていること、そして、私はバングラデシュで十分に食料にアクセスできない人々がいることを目の当たりにしています。これらのことを思うと、どんなに大変なときでも、常に頑張る情熱を維持できるのです。

ーその情熱が、御社の事業につながり、社会課題解決に直結しているということなのですね。

ユーグレナの事業はSDGsのゴール1と2(食料…貧困・飢餓)、7と13(新エネルギーによるジェット燃料・・・エネルギー・気候変動)、14(養殖魚の餌としての活用・・・海洋資源)に関係しています。特に、海洋資源のサステナビリティにおいて、日本は厳しい立場におかれている現状があります。日本の漁業者は漁獲による所得が十分ではない為、海洋資源保護の為に漁獲量にキャップをかけることでは納得を得られない。一方、ノルウェーでは漁業者の所得が日本の3倍あるといわれています。ユーグレナの技術を使い、ミドリムシを用いたバイオジェット燃料の副産物(残渣)をエサにすれば、サステナブルな養殖ができるようになります。

ー御社には事業のアイデアが溢れているようにお見受けしますが。

実は、当社のような企業にとっては、アイデアはあまり重要でなく、テクノロジー(技術)が一番大切なのです。そして、テクノロジーを形にすることが重要なのです。例えば、スマホなどはアイデアが大事であり、アイデアがあればアプリなど、いかようにも展開できる。一方で、当社は大学発のベンチャー企業であるため、大学の研究を社会実装することが、ミッション(存在意義)なのです。革新的な技術を社会実装すると、こんなことができるというケースを社会に示し、大企業と一緒にオープンイノベーションの形にもっていきたいと思っています。

ーご著書の中で、 「イノベーションを起こした人が渡る川がある」という言葉が大変印象深かったのですが、この言葉の意味と、組織の中の個人がambition(大志), challenge(挑戦), breakthrough(現状打破)を持つためには、どのようなマインドでいるべきか、何かアドバイスを頂けますでしょうか?

そうですね、その言葉の意味は、川をずっと待っていても、上流から船やいかだが足もとに流れてくることはない。川に入ってみないと深いのか、汚れていただけで浅くて誰でも渡れるのかわからない。ほとんどの(できないという)バリアは心理的なものであり、イノベーションが難しいということは絶対にないのです。そうでなければ、バングラデシュから世界を変えるマイクロファイナンスが生まれることはあり得ない。小さな一歩で道が切り開かれ、せせらぎだった川が、様々な人のサポートにより、最後には大きな川になるのです。

そして、イノベーションへのチャレンジにどう一歩を踏み出すか。ベンチャーは死の谷を渡れる勇気ある人しかできない事ではありません。大企業にいる人が大企業の中で開発し、足りないものをベンチャーと力を合わせ、オープンイノベーションで取り組めば良いのです。大企業のトップがベンチャーを上手く取り込んでいきたいと言っている今が大きなチャンスだと思います。ニッチなテーマや新しいものは、大学や大学発ベンチャーに強みがあります。(ベンチャーと大企業が)お互いに無いものを持ち寄ってやるのが、オープンイノベーションの本旨だと思います。

ー社会にイノベーションを起こす存在である御社は、どのような人材を求めていらっしゃるのでしょうか?御社を志望される方は皆さん社会課題解決の志を持っていらっしゃるのでしょうか?

ユーグレナは、最初は3人からスタートし、今は350人(グループ会社含む)を越えています。皆とても素晴らしい人ばかりです。大事なのは、当社がやろうとしていることが一体どういうことなのか、つまり、ミドリムシで栄養失調をゼロ、新エネルギーでCO2をゼロにするために作った企業であるということを理解し、そういう会社であれば多少条件が悪くても事業に参画したいというセルフモチベート、セルフドリブン(自発的/自律的な行動をとる)の人には、とてもフィットする会社です。ユーグレナには中核の科学技術があり、その技術で栄養失調の子どもが元気になる、2020年にジェット機も飛ぶ、そういうことをやりたいと望む人は、無理に広告を出さなくても来てくれます。

ー御社の理念や事業に共感する人材で構成された組織は素晴らしいですね。実は、私共のSDGsレポートにおいても、SDGs理念を社内浸透させ意義を共有することが不可欠であるとお伝えしているのですが、現状では、事業活動のキーパーソンである中間管理職への浸透が課題になっています。

組織が大きい会社は大変でしょうね。CSR、SDGs、1%クラブ(経常利益や可処分所得の1%相当額以上を自主的に社会貢献活動に支出しようと努める企業や個人の有志からなる団体、経団連が1990年11月に設立)等がありますが、トップが言っても浸透しにくいのでしょうか。ただ、(浸透しないと言っている会社の話を)注意深く聞いてみると、そうしたところは従来型(Conventional)の大企業であり、ユーグレナは栄養失調をゼロにすることと新エネルギーを作る目的で設立した企業であり、お金儲けをする為に設立した会社ではない。設立主旨とミッションが大手の大企業と根本的に違うので、SDGsが浸透しなくて困っているということはありません。

企業理念

㈱ユーグレナ、コーポレートサイトより

ー今回のGCNJ/IGES作成のSDGsレポートでは、企業理念の根源には「社会課題の解決」があり、そこに立ち返ることでSDGs達成への取り組みを進めることをメッセージとして出す予定です。

どんな会社でも最初はベンチャーだったのです。経営理念の本質を理解する一番簡単な方法は、創業者の思いに立ち返ることです。私は、現在絶版となっている本も取り寄せて、様々な会社(リコー、日清食品、ソニー、etc.)の経営理念を読みました。ですから、実際にそこに勤める社員よりも詳しい自信があるのですが(笑)。創業者の皆さんがすごくパワフルなのが分かりますよ。(日清食品の)戦争や震災の後に大変だったから食べてもらうというのは、まさにSDGsです。何故そういう会社が続いているのかを考えると、SDGsの意義は簡単に浸透するのではないでしょうか。ユーグレナはまだ新しい会社なので、立ち返る必要もなく、皆、創業の精神や経営理念を共有していますが。

  

ーでは、御社の経営理念と企業ビジョンの位置づけについてお聞かせ下さい。事業運営の実際的な指針や事業判断の基準になっているのでしょうか?

企業ビジョンである「バイオテクノロジーで、昨日の不可能を今日可能にする」は、折にふれて立ち返るものでもない(有名な「今日の不可能は明日可能になる」だと、難民の人々には明日が来るか分からないという人もいるため、それを少し変更した)ですが、これは多くの人の力を結集させなければできないことです。しかし、経営理念「人と地球を健康にする」を10か条にした行動指針「ユーグリズム」は常に立ち返るものです。

   
行動指針「ユーグリズム」

㈱ユーグレナ、コーポレートサイトより

       

ー御社はベンチャーから株式公開企業になりましたがが、今後、株主から、理念に反してでも利益を追求しろという要望がでてくる可能性もあると思いますが、そうした事態についてどのようにお考えでしょうか?

当社は2012年にマザーズに上場、2014年に東証一部に上場しました。株主との関係では2つ大事なことがあると考えています。1つは東京大学発ベンチャー企業として、ユーグレナは日本で初めて東証一部に上場しました。株主との関係は非常に大切で、現在のユーグレナの株主は約9万人です。食品カテゴリーの中で、10万人以上の株主がいるのは、日本では吉野家、マクドナルド、カゴメの3社しかなく、ユーグレナは上場して4年で4番目の位置にあり、それだけ大勢の株主から資金を預かっているのです。株主と対峙することの重要性は承知しており、株主を軽視するなどということはありません。

ただ、株主の時間軸に対する考え方は、非常に短期的であり、株主の企業に対する評価は、四半期と短くなっている一方、研究実績を社会実装する為に必要な時間は長期化しています。事業として成立するのにミドリムシは25年、東レの炭素繊維も25年かかっています。

ユーグレナは2005年につくった新興企業であり、栄養失調の子どもをゼロ、新エネを日本から生み出すために作った会社です。株主からの意見がもし、「人と地球を健康にする」為のものであれば、その声に真摯に向き合い、会社の経営にいかに反映させるかを考えていきます。

株式会社ユーグレナ 出雲社長

ー本日は、貴重なお話を伺う機会を頂戴しまして、誠に有難うございました。

(取材・文=GCNJ堂脇智子・IGES小野田真二 取材日2018/3/6)

取材こぼれ話
取材こぼれ話:出雲社長のお話からは、「人と地球を健康にする」ことに全身全霊を傾けていらっしゃること、そして何より「ミドリムシへの愛」と志を同じくする社員の皆様(ご著書では「仲間」)への絶対的な信頼が伝わってきました。2020年の日本の青空には、「ミドリムシ」が飛ばしたジェット機が誇らしげに飛行していることでしょう。