グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン

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組織概要

呉 文 繍理事メッセージ

「企業に期待すること」

理事写真3

私がサステナビリティに関わったきっかけは、東日本大震災でした。
2011年3月10日に国連防災機関(UNDRR)の方が会社に来られ、UNDRRが創設する民間セクターグループの諮問委員への就任を依頼されました。そして、その翌日の3月11日に東日本大震災が起こりました。
国際航業も事業所や社員の家族らが被災し、仙台空港にいた空撮用の飛行機2機も津波で流されました。しかし、事前に結んでいた国土地理院との緊急航空写真撮影の災害協定が直ちに発動したため、社員は徹夜で空撮の準備を行い、12日早朝から調布にいた飛行機を飛ばし、被災地の状況を空撮しました。同業5社も加わり、6社で全被災地域の空撮を2日間で完了し、国土地理院がウェブサイトで全写真を14日に公開しました。被災範囲が広すぎるため被災状況が分からない中、多くの機関がこれらの写真を救援や復旧活動に役立て、作業を迅速に行うことに役立ちました。それ以降も、被災した自治体を代行して被災者に罹災証明を発行、災害廃棄物処理の計画、復旧復興計画の作成など、様々な協力を迅速に行いました。
そんな中、UNDRRから5月にジュネーブで開催される防災会合の、国連事務総長が議長をする最も重要な会議で、東日本大震災で企業が果たした役割を話すように依頼されました。日本企業が社会の一員として頑張っていることを世界に発信することは、私に課された天命だと思い、引き受けました。

グローバル・プラットフォーム会合2011 ©UNDRR

国連の会合に参加して知ったことは、国連は企業にお金や物の寄付の貢献以上に、本業を通じての社会貢献を期待していることでした。防災面では、つまりそれは会社の事業継続力の強化です。会社は社員と家族を守ることで、社会の被害を最小化できます。また、企業が提供する物やサービスのお陰で成り立っている人々の生活を守る責任も果たせます。さらに企業が持つ技術を使っての協力は、非常に価値のあるものです。自衛隊が救援物資を大量に運んだが、集積所が混乱して被災者に物が届かないというラスト・ワン・マイル問題を、宅急便会社が協力してすぐに解決したというのは典型例です。

国連活動への参加は、SDGs、気候変動枠組COP会議へと続き、そして国連グローバル・コンパクトのボードメンバーに就任して、本格的にサステナビリティ全般へと広がりました。いずれの分野でも、国連が描くサステナブルな社会の中で企業が期待されている役割は、本業を通じての社会への貢献です。企業は利益を追求するだけではなく、事業を通じて人々を幸福に、また社会をよくすることで、対価を得るのが本来あるべき姿です。つまり企業価値と社会価値の両立であり、これこそが、国連が企業に期待し、国連グローバル・コンパクトが多くの企業・団体に広めようとしていることです。
企業価値と社会価値の両立と言うのは簡単ですが、利益優先が依然として本流の社会の中で、個社で実行するのは容易ではありません。GC10原則の遵守という同じ志を持ち、類似の悩みを抱える多様な企業が集まって、知恵を共有し、団結して障害を乗り越えて、自社と社会を変革して行く。その機会と場を提供し、サポートしていくのが国連グローバル・コンパクトのミッションです。より多くの皆様に、積極的に参加して協働していただくことを強く期待いたします。

国連グローバル・コンパクト ボードメンバー
グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン 理事
国際航業株式会社 代表取締役会長 呉 文 繍 Sandra Wu, Wen-Hsiu