グローバル潮流を学ぶ
腐敗防止への取り組み
腐敗の形態は、贈収賄や談合から、資金洗浄、横領など、多岐にわたります。日本国内でも、こうした問題の完全な排除はできておらず、政府や産業界を含む社会を揚げて、状況を改善すべく努力を続ける必要があります。他方で、国際的な取引をめぐる腐敗行為は、一層深刻化しています。とりわけ一部の新興国・途上国には、法による統治メカニズムが機能せず、人権・労働・環境を含めたさまざま問題に対する規制の効果が十分に発揮できない状況があります。その背景には、贈収賄をはじめとした腐敗行為が、行政や司法における日常業務に深く入り込むことで、公正な意思決定を歪めているという構造的な問題があります。ビジネスのグローバル化に伴い、こうした問題に対する先進国企業の関与が問題視されています。GCNJでは、単なる法令動向の把握から一歩進んだ、各社の取り組み・課題を踏まえた実践に即した議論の場として、腐敗防止分科会が活動しています。
有識者メッセージ
GCNJは海外贈賄防止委員会(Anti-Bribery Committee Japan:ABCJ)と、2018年より腐敗防止年次フォーラムを共催で開催しています。
6回目となる2023年10月に開催されたフォーラムでは、ドイツのベルリンに本部を置き、世界100カ国以上で腐敗防止に取り組む国際ムーブメント Transparency Internationalから、フォーラムのためにビデオ・メッセージをお寄せいただきました。
ビデオ・メッセージの概要
テーマ:Japanese anti-corruption efforts - making a difference in times of disruption
「日本企業の腐敗防止の取り組み~混迷の時代に効果を生むには~」
出演者:Ms. Gillian Dell, Head of Conventions Unit, Transparency International
イニシアチブ
国際社会は腐敗防止のための包括的かつ総合的なルールの策定と運用を進めています。企業が国際社会のルールに違反すれば、巨額の罰金を科されるだけでなく、公共事業への入札参加資格の停止措置、取引先・金融機関からの取引解除・損害賠償、投資の引き上げ・議決権行使の可能性が生じます。また一旦問題が明るみに出れば、企業のレピュテーションや信頼は大きく損なわれ、取り戻すには膨大な時間と費用と苦労が必要となり、株主訴訟や経営者の刷新にもつながります。そこで、企業は自己防衛のためにも、腐敗の防止に真剣に取り組み、また腐敗事象が万一発生した際の対策を事前に準備しておくことが必要です。とはいえ、腐敗は構造的問題であるが故に、個社による取り組みには限界があります。
GCNJは、問題に関わる全ての企業による取り組みを促すため、2017年に海外贈賄防止委員会と協働で「東京原則」(PDF:117KB)を定め、腐敗防止のコレクティブアクションを推進しています。
企業は東京原則に含まれるアセスメントツールを用いることで、STEP1: 会社のリスク分類の特定、STEP2: 各コンプライアンス項目の達成状況の判断、STEP3 :企業の贈賄リスクの管理状況の評価、STEP4:情報開示を通じてのステークホルダーとの対話へと、対策を強化できます。
東京原則のメリット
近年、企業が腐敗防止の取組み状況を外部から評価される機会が増えていますが、情報開示が不十分ゆえにESG投資などにおける評価も低くなっています。「東京原則」(PDF:117KB)への賛同は、腐敗防止に関する積極的な取組み姿勢を社会に発信するのに有効です。
東京原則の「贈賄防止アセスメントツール」は、機関投資家と投資先企業との間の贈賄防止強化に向けた対話を促進し、かつ企業の透明性と持続可能性を高めるのに有効です。