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(仮訳)
原則7 企業は、環境上の課題に対する予防原則的アプローチを支持すべきである
予防原則的アプローチとは
予防原則的アプローチとは、1992年に発表された「環境と開発に関するリオ宣言(PDF)」(日本語)における第15原則をきっかけに世界的に採用され始めた考え方です。第15原則では下記のように述べられ、規定されました。「深刻な、あるいは不可逆的な被害のおそれがある場合には、完全な科学的確実性の欠如が環境悪化を防止するための費用対効果の大きい対策を延期する理由として使われてはならない」。 ※くわしくは、環境省資料(PDF)(日本語)をご参照ください。
予防原則的アプローチには、リスクアセスメント(危険有害性物質の特定と特性評価、摘発内容の審査、リスクの特性化)や、リスクマネジメントおよびリスク伝達が必要となります。危害が起きる合理的な疑念が生じ、政策決定者が予防措置を行う必要がある場合には、科学的評価からどの程度の不確実性が明らかになるかを検討しなければなりません。「許容可能な」リスク水準を定めるためには、科学技術的評価と経済的費用便益分析だけでなく、一般市民にとっての許容可能性などの政治的考慮も必要となります。公共政策の観点から見れば、科学的な情報が不完全または不確実であり、さらに関連リスクが社会に強いるにはあまりにも大きいと考えられる場合、予防措置を実施することになります。通常、検討対象となるリスク水準は「環境」、「保健」、「安全」の基準と関連づけられます。
企業にとって予防原則的アプローチが重要な理由
企業の視点から見た場合の予防原則的アプローチの主要素は、治療よりも予防を重視するという考え方にあります。すなわち、早期に対策を講じ、取り返しのつかない環境破壊が起こらないよう予防性を確保する方が、よりコストの効率が良いということです。すなわち、企業は下記を考慮に入れなくてはなりません。
- 確かに環境破壊の予防には機会費用だけでなく実施の費用も伴うが、環境被害が生じた場合に要する回復のための費用には、処理費用や企業イメージなどの観点からそれよりもはるかに高くつくおそれがあるということ
- 持続可能でない(つまり、資源を枯渇させ、環境を破壊する)生産方法への投資は、持続可能な事業への投資よりも長期的な収益率が低い。すなわち、環境パフォーマンスを向上させれば金融リスクが低下し、それが保険会社にとって重要な考慮点となるということ
- より環境にやさしい製品に関する研究開発は、顕著な長期的利益をもたらすこと
予防原則的アプローチを適用する際に企業が講じうる措置
予防原則的アプローチのもと企業が取り組むべき問題としては、消費者へのよりよい情報提供を行い、消費者、市民、環境のために潜在的なリスクを伝えることなどが挙げられます。また、潜在的有害性が認められる一定の製品を市場に出す場合には、事前の承認を取り付けることも重要です。
予防原則的アプローチを適用する際、企業が講じうる措置としては、下記があげられます。
- その業務と製品に関し、健康と環境の配慮へのコミットメントを裏付けるような行動規範もしくは実施基準を策定すること
- 全社的な予防原則的アプローチの一貫した適用について社内にガイドラインを策定すること
- 特に慎重を要する問題領域のリスクマネジメントについて、企業の予防原則的アプローチの適用を監督する管理委員会もしくは運営グループを立ち上げること
- ステークホルダーとの間に、先を見越した早い段階で透明性ある相互コミュニケーションを確立し、不確定要素や潜在的なリスクに関する情報の効果的な伝達を確保するとともに、関連で寄せられる問い合わせや苦情に対応すること。そのために、マルチステークホルダー会合やワークショップでの議論、フォーカスグループ、ウェブサイトや活字媒体を使った世論調査などの方法を活用すること
- 関係する国内外の機関と協力して、独立した公的研究を含め、関連する学術的な研究を支援すること
- 業界規模で行う協同的な取り組みに加わり、特に不確実性が高く大きな被害を生みかねず、また慎重を要する度合いが大きい生産工程や製品について、知識や対処方法を共有すること
(最終更新:2009年2月12日)