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(仮訳)
原則5 企業は、児童労働の実効的な廃止を支持すべきである

児童労働とは

児童労働を「若年層雇用」や「学生労働」と混同するべきではありません。児童労働は、人権侵害を構成する搾取の一形態であり、国際協定によって認識、定義されています。国際社会およびほとんどすべての政府は、児童労働の廃止を政策に掲げています。

「児童」には18歳未満のあらゆる男女が含まれますが、18歳未満の子どもをすべて労働から解放せねばならないということではありません。国際基準に基づく基本的なルールは、異なる年齢および発育段階によって、子どもが許容できる仕事と許容できない仕事を区別しています。ILO条約(第138号の最低年齢条約(日本語)第182号の最悪の形態の児童労働条約(日本語))は、国内法で就職または就労の最低年齢を定めるための枠組みを提供していますが、この最低年齢は義務教育修了年齢未満であってはならず、かつ、いかなる場合にも15歳を下回ってはなりません。ただし、国家が過渡期にある場合は、これより低い年齢も認められています。例えば、経済や教育機関が十分に発達していない国においては、原則として、通常の仕事は14歳、「軽易な仕事」は12歳が最低年齢とされています。危険な仕事に関する最低年齢はこれより高く、すべての国で一律18歳とされています。

就職または就労の最低年齢

ILO条約第182号は、政府に対し、18歳未満のあらゆる子どもの最悪の形態の児童労働の廃絶を優先課題とするよう要求しています。最悪の形態の労働は、次のように定義されます。

※横にスクロールしてご覧いただけます

就職または就労の最低年齢をまとめた表
項目 先進国 開発途上国
軽易な仕事 13歳 12歳
通常の仕事 15歳 14歳
危険な仕事 18歳 18歳

第182号条約は第138号条約を明確に補足するものであり、これを他形態の児童労働を正当化するために利用してはなりません。

企業が児童労働について懸念すべき理由

児童労働はあまりにも低年齢の子どもに作業を強いるため、子どもの身体、社会性、知性、心理、精神の発達を阻害します。児童労働は子どもから幼年時代と尊厳を奪ってしまいます。こうした子どもたちは教育の機会を奪われ、家族から引き離されることもあります。初等教育を修了していない子どもたちは読み書きができないまま取り残され、仕事を得て近代経済の発展に貢献するために必要な技能を全く身につけられない傾向にあります。その結果、児童労働は技能の不足した未熟練労働者を作り出し、将来的な労働者の技能向上をも脅かすことになるのです。

子どもには成人と同じ人権があります。しかし年齢が低く、知識や経験を身につけて成長する過程にあるという理由から、子どもには彼ら固有の権利もあります。こうした権利には、子どもの健康、安全または道徳を脅かしたり、発育や教育の機会を妨げたりするおそれのある経済的搾取、労働からの保護が挙げられます。児童労働の問題は複雑であるため、企業はこの問題に慎重に取り組む必要があり、働く子どもたちをさらに搾取的な労働形態に追いやるような行動を取ってはなりません。それでもなおやはり、すべての企業は原則5にあるとおりその影響力が及ぶ範囲で児童労働の廃絶を最終目標とするべきです。

児童労働に関与すれば企業の評判に傷がつく危険性が高まります。これは特に、大規模なサプライチェーンとサービスチェーンを有する多国籍企業に当てはまります。例えそれが取引先によるものであっても、子どもへの経済的搾取が起こればブランドイメージが損なわれ、利益や株価に大きな影響が及びかねないからです。

企業にとっての戦略

児童労働を引き起こす原因やその結果についての認識や理解を深めることは、企業が児童労働対策として講じることができる最初の措置であるといえます。これは、問題点を明らかにし、児童労働が社内で問題となっていないかを見極めることを意味します。地理的に遠く離れたサプライチェーンを持ち、かつ特殊な業種から調達を行う企業は特に警戒が必要です。また一方、児童労働は先進工業諸国でも一部の移民コミュニティなどでより目立たぬ形で広がっています。

例えば文書や記録がない場合などは児童労働が使用されているかどうかを見極めることが難しいこともあるため、企業は現地のNGO、開発機関または国連機関などに支援を求めることも検討できるでしょう。

児童労働の使用が明らかになった場合、子どもたちを職場から解放し、実行可能な代替措置を提供する必要があります。こうした代替措置には多くの場合、子どもたちを就学させることや両親または就労年齢に達している家族の一員に所得を生み出す仕事を提供することなどが挙げられます。子どもは支援がなければ売春などのさらに悪い状況へと追い込まれるおそれがあり、またもし子どもが唯一の稼ぎ手である場合に仕事を直ちに取り上げてしまうと、その苦境を緩和するどころか逆に悪化させてしまいかねないことを、企業は認識する必要があります。

企業にできること

職場において

進出先のコミュニティにおいて

(最終更新:2016年4月1日)