■アスクル株式会社
困難でも簡単に諦めず、解決へ進む!
率先して取り組む5つのマテリアリティ(重要課題)
アクション宣言
- 時間と場所にとらわれない柔軟な働き方を退化させることなく、コミュニケーショ ンが活発に行われるよう職場環境や働き方を進化させる。
- 「育児」や「介護」と「仕事」が当たり前に両立する社会を目指し、2028年までに 男性育休取得率100%を目指す。

自社の重要課題をしっかりと見つめ直し共有する
アスクルでは、猛スピードで変化していく社会環境に合わせて変化する顧客の価値観や行動に常に目を向け、サービスも変化させてきました。中小事業所向けの事務用品のカタログ通信販売から始まり、時代を捉えて早期にインターネット通販へと舵を切り、国内最大規模のBtoB EC事業者へと成長してきました。
しかし、それはただ利益を追求してきたのではなく、同じように時代とともに変化する自然環境や社会課題への責任も考え、顧客も巻き込んだエシカルなeコマースの追求や人材育成にも力を入れてきました。
そうしたアスクルの持続可能な社会の実現に向けた活動指針とともに重点的に会社が取り組むべきだと考えている重要課題を「アスクルのマテリアリティ」として、掲げています。
今回、「GCNJコレクティブ・アクション 2030」に賛同したのも、このマテリアリティと基本的な方向性が合致しているからであるとアスクル株式会社 代表取締役社長CEOの吉岡晃氏は言います。
「弊社はこの5つの課題を中心に取り組んできていますが、さらに『GCNJコレクティブ・アクション2030』に賛同することで、社会に対してさらにきちんとコミットしていく責任が出てきます。そして、その責任を担うことは重いですが、すべきことだと考えています。もちろん簡単に解決できる課題ばかりではありませんが、他社と共に歩むことで自己研鑽にもなりますし、うまくいかない時期があっても簡単に旗を降ろさないで取り組み続けなければいけないことです」と強い決意を示しました。
成熟した日本社会の公平性を目指す
吉岡氏は、自社だけでなく日本全体で働き方について真剣に取り組む時が来ていることを実感しています。
「海外のビジネスパーソンたちとやりとりをしていると、日本はこのままの働き方では遅れをとるだろうと感じます。海外展開を考えていく日本企業にとって、高度成長期に機能していたような自分たちの基準や理論は、到底当てはまらなくなります。大量生産・大量消費のパターン化された成功モデルはもう通用しない。
働きたい人がきちんと働ける公平性を、会社も国としての社会制度も検討していかなければいけない時に来ていると思います」
2025年1月28日に行われた「GCNJサミット2025」でも、17社のトップによるラウンドテーブルに参加したり、基調講演や他社の発表を聞いたりしたことで、多くの学びを得ました。
「『GCNJコレクティブ・アクション2030』の場で学ぶことは、今後も社員にも継続的に情報共有をしていくつもりです。社員全員が、経営者と同じ感覚を持つことは難しいものです。しかし、だからこそ『また社長が同じこと言っているよ』と言われるくらいに、何度も伝えていくことが重要だと考えています。女性活躍も男性育休も、さまざまな働き方も、互いの理解が必要です。私が繰り返し伝えることで、社内でも風土が少しずつでき、互いに寛容になっていっているのを感じています」
現場を変えるには、何度も繰り返しトップがメッセージや取り組む本気度を伝え続けること。その言葉を徐々に浸透させていくために何度も社内にメッセージを発信し続けています。
経営と現場の目指す方向をすり合わせるためにも、吉岡氏は社員との直接対話会(CEOタウンホールミーティング)を、全社員に行い、その数は2025年3月末で合計196回、延べ1050人以上!トップも社員も課題感を共有していくからこそ、風土ができていくのでしょう。
男性育休は平均取得約75日!女性活躍も「2030」へ!
そうした風土が浸透してきた結果として、さまざまな変化が起きています。例えば、男性育休は100%を目指し取り組んでいますが、現在は約70%。しかし、注目すべきは平均取得日数が約75日であることです。
「『GCNJサミット2025』では、男性育休取得率が100%の会社さんもいて進んでいると感じました。弊社では、最大4回に分けて取得することができるので、それぞれの家庭のニーズに合わせて分けて取る人も多いです。また、男性育休を取った管理職が増えてきたことで、先輩から意見を聞けたり、上司が勧めてくれたりする風土ができていることが何よりだと思っています」
また、女性管理職比率の目標として「2030」(2030年までに女性管理職比率30%)を宣言し、組織内の女性活躍の推進、女性管理職の登用にも積極的に取り組んだ結果、女性管理職比率は2014年の12.3%から、2020年には22.1%まで飛躍しました。しかしながら、「2020年までに30%」の目標達成には至らなかったため、現在は改めて「2530」(2025年までに女性管理職比率30%)という目標を宣言し、取組みを進めています。
「これまでは実力があるけれども挑戦するチャンスがなかった女性たちが、どんどん適したポジションに昇進し、部長レベルでも多く活躍しています。“下駄を履かせる”という言い方がありますが、下駄というよりはチャンスだと思っています。本来は実力のある人たちが、男性でも女性でも活躍できるチャンスを与えることで、大きく活躍の場を広げてくれています。ただ、性別関係なく誰もが管理職になるわけではありません。現在、社員の男女比は6:4ですので、それを考えても女性の活躍を増やすには、やはり管理職前のリーダー層から経験を積み、育てることが必要です。それには時間がかかります。機会を増やし、『上の仕事に挑戦したい』と考えられるチャンスを増やしていきたいと思っています」
アスクルは「GCNJコレクティブ・アクション2030」への賛同を機に、国連グローバル・コンパクトと国連婦人開発基金(UNIFEM、現・国連女性機関UN Women)が共同で策定した、企業がジェンダー平等を経営の核に位置付け、自主的に取り組むための行動指針である「女性のエンパワーメント原則(Women’s Empowerment Principles=「WEPs」)」にも、2024年12月に署名をしました。取り組む姿勢の本気度が伺えます。
それぞれの希望や成果に合わせた働き方、評価、報酬へ
これからさらに「GCNJコレクティブ・アクション2030」で吉岡氏が取り組んでいきたいと考えていることがあります。
「年齢や体力による個人差はありますが、今後は評価制度や報酬制度も含めて、公平性とは何かを検討していかなくてはいけないでしょう。育児や介護などのサポートも必要ですし、一方で働ける人、成果を出せる人はきちんと評価をすべきですよね。定年を超えてもしっかり働きたい人にはそうした場と適した評価や報酬を用意するべきです。そうした、『pay for performance』についても議論していきたいですね」
さらなる企業の賛同についても期待しています。賛同検討企業への思いを語りました。
「賛同する企業が増えるほど、日本社会が良くなっていくと信じています。ベストプラクティスは大きな場で共有し、悩みや心配を小さなワークセッションなどで話し合っていくこともいいかもしれないですね。賛同企業が増えるほど、多様なケースが共有されるので、ぜひ一緒にこれからの日本社会の公平性を考えて、前に進みましょう」