グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン

会員数:企業・団体 会員ログイン

■住友林業株式会社
「地球環境」「人と社会」「市場経済」への価値を提供​
全国の拠点で働きやすい環境の実現へ

アクション宣言​

  • 一人ひとりの状況に応じたリソースを提供し、協力し合いながら誰もが働きやすい環境を築く​
  • 仕事とプライベートの両立について、情報交換や課題解決を目的とした「繋がりの場」づくりを推進する
住友林業株式会社 代表取締役 執行役員社長 光吉 敏郎 氏

多様な社員・価値観・スキルを活かして、「ウッドサイクル」を回す​

2022年2月、住友林業グループは、SDGsの目標年でもある2030年に向けた長期ビジョン「Mission TREEING 2030」を策定。「地球環境への価値」「人と社会への価値」「市場経済への価値」の3つの価値を同時に満たす事業活動を推進しています。

住友林業株式会社 代表取締役執行役員社長の光吉敏郎氏は言います。

「住友林業グループは、森林経営から木材建材の製造・流通、戸建住宅・中大規模木造建築の請負や不動産開発、木質バイオマス発電まで『木』を軸とした事業をグローバルに展開しています。この住友林業のバリューチェーンである『ウッドサイクル』を回すことで、森林のCO2吸収量を増やし、木造建築の普及で炭素を長期にわたり固定し、社会の脱炭素化に貢献することを目指しています」

『ウッドサイクル』を実際に回していくのは、国内外で2万6千人を超える社員です。既存の事業セグメント間を横断するものも多く、多様な社員の価値観やスキルを活かして、協力し合ってサイクルを回していくことが必須です。また、これまでの枠組みや考え方にとらわれないアイデアや行動にもとづくイノベーションが必要です。

誰もが公平なチャンスが得られ、個々の社員の事情や働き方の違いに関わらず、力を発揮できるようにするためにも、DE&Iをさらに進めていくことが不可欠という意識から、『GCNJ コレクティブアクション2030』への参画を決め、アクションプランを策定しました」

社長自ら現場を訪問し、見えてきた社員の本当の声と課題

光吉氏は、社員とのコミュニケーションの機会を定期的に設け、意見交換を実施しています。2024年からは「光吉社長がいく!現場対談」と題して、全国の支店・営業所等を訪問し、社内イントラネットで訪問の様子を紹介しています。

社員が現場で感じている課題や本音を聴き、社員からの質問に答える中で、制度制定についてのある気づきが得られたといいます。

「『産休や育休を取得することによって昇格や昇進が遅れる』という声が、住宅営業を担当する女性社員から複数の支店で聞かれました。非常に優秀な営業社員も、出産や育児に関する制度が活用できても、次のステップに進むのに時間がかかってしまう。そのことを憂いていたのです。

制度は、東京の本社でさまざまな意見を取り入れて策定していますが、運用していく中で、制度を活用する現場の本音を聴くことが大切です。だからこそ、現場に出向いて情報を得て、常にアップデートしていく必要があると考えています」

アンコンシャス・バイアスに気づき、能力を生かして働ける環境に

住友林業では、62拠点ある住宅事業の支店長というポジションは、これまで全員男性でしたが、2025年4月に女性支店長が誕生しました。

「男性の職場というイメージが強い建設業界ですが、営業や設計、施工管理など全ての分野で女性が多数活躍しています。建築現場では、当初、昔気質の大工さんから、『女性の現場監督がうまくやれるのか……』という声が上がっていたことも確かですが、丁寧に現場を仕切り、ロジカルに要望や指示を伝えることで、結果、工期も短く済み、お客様アンケートでの満足度も高かったのです。

制度を運用していく中では、今までの業務プロセスとは違った仕事のやり方をしなくてはならないケースも出てくると思います。また、新たな試みに対しては、未来にある効果よりも目の前の業務遂行を優先しがちです。過去の成功体験や既成概念にとらわれず、お客様の満足度向上と社員の働きやすさを同時に生み出すには、上司と部下、同僚とのコミュニケーションの場づくりが非常に重要となってきます。部下の挑戦を後押しするためには、管理職の意識改革も必要です」

一方で、1つの制度で全社員のライフとキャリアをサポートすることの難しさも感じていると言います。

「事業や業務によって限りなくジョブ型に近い仕事もあります。たとえば、住宅の営業は成果報酬ですので残業ありきになりがちです。また、土日にお客様との商談もあります。

部署によって仕事の内容だけでなく、定休日などの働く環境が異なりますので、1つのルールですべての社員の働き方を上手にカバーできないことも多く、制度制定と活用については常に検討していく必要があると考えています」

働き手不足は、日本の企業全社で取り組むべき課題

1月28日に行われた「GCNJ サミット2025」に参加し、2つのアクション宣言をした住友林業グループ。光吉氏は、この日、他社の社長らとの意見交換によって得られたことも多かったそうです。

「基調講演をされた小室淑恵さんの書籍は拝読していました。本日の講演でも、人口ボーナス期・人口オーナス期のお話が出ていましたが、働き手不足は日本が抱える深刻な課題です。

まずは、会社を選んでくれた社員の皆さんが、育児や介護などさまざまな事情を抱えながら仕事をされている中で、いかに仕事を離れずに活躍できるか。企業が労働力の最大確保を考えるなら、社員すべてに公平な活躍の機会を用意する必要があります。

本日の宣言の場で、各社が目指すところは同じであると改めて実感しました。どの企業にも育休や介護、フレックスなど、ほぼ同様のレベルの制度がすでに整っていますが、制度が本当に有効活用されて、より良い制度に改善されていっているのか……となると、やはりこれからであると感じました」

企業のトップがDE&Iに対して意見交換をする稀有な機会が広がることが、日本の未来には必要だという光吉氏。「GCNJ コレクティブ・アクション2030」に賛同している他社との情報交換に期待しているといいます。

「『GCNJ コレクティブ・アクション2030』のような組織あるいは運動が、どんどん日本中に広がっていくことが、日本のDE&I促進に一番効果があると思います。意見交換の場として、ぜひ多くの企業に参加を検討していただけたらと思います」