■三井住友トラストグループ株式会社
社内副業、サポーター役員など
社員の自立したキャリア形成を支援
アクション宣言
- 柔軟な働き方を実現する制度の拡充とともに、多様な働き方を理解•受容し、相互に協力し合う企業風土を実現する。
- 労働時間の削減と、適切な休暇取得の推進を通じて、社員のワークライフバランスを実現する。

他社の「ちょっとした工夫」がヒントになる
「当グループも含めて、参加企業はすでに様々な取り組みをしてきた会社が多いと思います。この数年で各社とも仕組み・制度は充実していますが、次はそれが実際に活用されないといけないフェーズに来ているのだと思いました」
三井住友トラストグループ株式会社 取締役執行役社長(CEO)の高倉透氏は、率直に言葉を繋げます。過去には長時間労働が問題になっていたこともあるそうですが、2017年にダイバーシティ&インクルージョン推進室を立ち上げ、大きく改善へと動いてきました。
「日進月歩のこの事案について、他社の取り組みを参考とさせていただくことで、新しい視点をもらういい機会になっています。どの会社も抱えている課題に大きな違いはないからこそ、他社の“ちょっとした工夫”が大きなヒントになるケースが多いですね」
専務・常務が女性社員のメンターに
三井住友トラストグループはこれまでも女性活躍をはじめ、公平な働き方の実現へ向けて一歩一歩取り組んできました。
「大きな成果として、役員を目指す女性社員が増えてきたという実感があります。持株会社である三井住友トラストグループはまだ社外取締役にしか女性役員はいませんが、グループ内の三井住友信託銀行には取締役に1人、また日興アセットマネジメントは社長が外国人女性です。2021年4月の時点では全員男性だった三井住友トラストグループの経営会議のメンバーは、2年後に女性が2人になり、今では4人に増えています」
これは、ただ女性管理職や役員の数を増やしたのではなく、下の層から将来のキャリアアップを考えられる機会を増やしてきたからこその成果です。特に、同社が始めた「サポーター役員制度」の効果は大きいようです。
「将来のマネジメントを期待する女性社員2人ごとに、専務ないし常務1名が1年間メンターを務め、最低でも月1回、1時間を対話や指導に費やします。これまでの3年間で約160人が参加しました。当初は『役員なんて目指していません』という女性社員も、1年を過ぎると、『もしかしたら』と考えを変える人が多くなっています」
可能な限り自身とは異なる所属の役員に付き、そのミーティングなどにも参加。普段とはまったく違うセクションの社員と接触し、見慣れない業務も経験します。一方の役員にとっても、女性社員の悩み事を新鮮な気持ちで耳にする機会となります。
「女性だけに?」という声もあるそうですが、今は意図的に機会を増やす必要があると高倉氏は話します。そして、それをまた変える時が来たら、次のフェーズへと移行するチャンスなのかもしれません。
さらに、高倉氏自身も主に男女を問わず30代社員7~8人集めたミーティングを不定期で行い、若手の意見を聞く機会を設けているそうです。
地方勤務で資産運用や海外向けIRの仕事を
「また、週1日だけ社内の別セクションで仕事をする『社内副業制度』を作りました。大きな経験値を得られるので、利用者は多いですね。東京の仕事を、例えば大阪や他の地方にいながらリモートで行うことも、今は可能です。東京の人事部に所属する大阪在住の社員もいますよ」
大阪本店ビルには関西地区の社員が遠隔で仕事ができる150席を完備。コロナ禍がきっかけで開始したことですが、住む地域による仕事の制約はほぼ乗り越えられるようになった、と高倉氏は言います。
「一部の地方店勤務では、従来なら個人客向けのサービスしかできなかったけれど、今は東京に拠点を置く資産運用業務や、リスク管理や海外投資家向けのIR業務なども可能になりました。また、オンライン相談を希望する個人のお客様の対応は、お客様の居住地域から離れた地方店にいても対応できるよう、環境を整備しています」
居住地域に縛られずにチャレンジしたい人には、好ましい環境が整っていると言えます。
「健康面でも、仕事のインターバルは11時間に設定しています。夜中に仕事をしたら、11時間空けてからでないと出社はNGです。ちゃんと睡眠や休息を取ってください、ということです。やむを得ず守れない場合は、出社して端末を開くと上司にメールが届いてその監視下に置かれる仕組みになっています」
高倉氏自身も睡眠・食事・運動を重視し、週2回、年100回以上はプールに通って泳いでいます。その残り時間を仕事とプライベートに使うそうです。
「自律」しなければ、制度を選べない
高倉氏は、「GCNJコレクティブ・アクション2030」で他社の経営トップが「社員の自律」について話していたのが印象的だったと言います。
「相当数の制度をそろえていても、自律していなければ、社員は制度や時間を主体的に選択することができません。職場に選びづらいムードがあって選ばなかったのであれば、それは自律していないということ。『自分を経営する経営者は自分だ』『自ら考え、自ら判断し、自ら行動せよ』ということを、社員に常々言っています」
制度を浸透させようと訓辞を述べたところで、浸透させられるものではないと話します。
「自律的に動く“クセ”が付いてくると、自然と乗り越えられるものです。自分の人生の中で、子育て、介護、仕事に取り組むウェイトをうまく組み立てることが非常に大切。そこで初めて制度を主体的に選ぶことができてくるでしょう」
これから「GCNJ コレクティブ・アクション2030」に賛同・参加を考えている企業の方々へもメッセージをもらいました。
「多くの人がご自身の持ち味を出して働きやすい社会になっていくよう、各社が取り組まれていることをこちらで学びながら、よい未来づくりができたらいいなと思っています。世代が変わればおのずと変わるものですが、上の方の世代が今、多くの人が望んでいることを知れば、変わるスピードがもっと上がると思います」