グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン

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■株式会社明電舎
トップ企業が一同に集まり、多様性への
取り組みを共有することに価値がある

アクション宣言​

  • 全ての従業員が最大限の力を発揮できるよう、働く場所(地域限定・テレワーク等)、働く時間(時差出勤・フレックスタイム制等)の柔軟な勤務形態を選択できる環境を拡充します。​
  • 家事・育児・介護に関する情報提供や従業員同士の対話を通じ、当事者の参画する意識と周囲の従業員の支援する意識を醸成します。
株式会社 明電舎 代表取締役 執行役員社長 井上 晃夫 氏

ESGへの取り組みから始まった多様性の追求

SDGsの前身ともいえるESG(※)が提唱されるようになった2000年代半ばより、いち早くESGに取り組んできたのが株式会社明電舎です。

(※)ESG:環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字からくる言葉。企業の経営や投資活動において考慮すべき観点を示す。

長年、海外でのインフラ事業などを展開してきた同社にとって、多様であることは事業の成長に欠かせない要素だと、同社代表取締役執行役員社長の井上晃夫氏は語ります。

「その国の成長とともに事業を拡大させていくには、それぞれ状況に合わせた多様なあり方を受け入れ、順応していかなくてはなりません。海外に限らず、将来的な企業の発展を考えたとき、多様な個の強さの強化は明電舎の企業理念を体現することであり、グループ企業全体の競争力を高めていくことになります」

明電舎のDEI方針

今回、「GCNJ サミット2025」に参加し、「GCNJ コレクティブ・アクション2030」では全体的な取り組みを宣言したのも、GCNJの理念が明電舎の企業理念と通じているのが理由です。

「人間は成長していく生き物ですが、最終的に目指す場所は心の豊かさだと考えています。多様性を尊重することで、心の豊かさを実感できる新しい社会を創り出すことができるのではないでしょうか」

男性育休100%取得を目指しDX推進と風土醸成を

明電舎では今回、「短時間勤務、地域限定職等の制度を整えている」「育児・介護における各種制度を整備」という2つのアクションを宣言。特に注力しているのが、男性の育児休業取得率の向上です。

同社の男性育休取得率は、2022年度が70%、2023年度が88%、平均取得日数は2022年度が12.2日、2023年度が32.3日です。平均取得日数が増えたのは、長期で男性育休を取得した社員が1名いるためですが、そのケースを除外しても全体的に取得日数が2〜3日増えているとのことです。

明電舎 男性育児休暇データ
  2022年度 2023年度
男性育休取得率 70% 88%
男性育休平均取得日数 12.2日 32.3日

明電舎の場合、インフラメーカーという業種柄、どうしても現場作業の比重が高く、社員の男女構成比は男性が多くなります。そんな中、いかに多くの男性社員が積極的に育児休暇を取得するかに向き合ってきました。

「社員それぞれの職種や働く環境は違っても、家庭や子育てなどのプライベートも大切にした人生を歩んでもらうという点はまったく同じです。だからこそ、会社としてはすべての社員の家庭生活や子育てをサポートする制度を設計し、利用を促していきたいと考えています」

男性社員の育休取得率向上のための具体的な施策のひとつが、制度紹介や取得について会社側から積極的に発信することです。そして、男性育休を取得するという数字的な目標に留まらず、その中身を意味あるものにしていかなくてはなりません。

「育休ではただ休むのではなく、しっかりと子育てや家庭のことに参加してほしいですね。その経験が自身の多様な価値観を広げてくれます。本人の生き方・働き方を見つめ直すことになりますし、それが最終的に会社の成長へと還元されていくものです」

また、人員配置の体制づくりやDX推進も男性育休取得を後押しする重要な施策となっていきます。

「一律に人員配置を変えていくことはハードルもありますが、大事なのはお互い様の気持ちを持つこと。それがさまざまな課題を解決する原動力になります。今は会社が男性育休取得を半ば強制的に促している部分もありますが、それがどんどん現場からの声として変わっていくようにしたいですね」

現場でヘルメットを被った年配の社員が、「子どもが生まれたなら、育児休業を取らなきゃダメだよ。それが君のためでもあるし、会社のためにもなるのだから」と、自然と声をかけてくれる。そんな社内の雰囲気をつくっていきたいと言います。

社員が介護を相談できる環境作りの重要性

男性育休に加えて、介護休暇への取り組みも今後より大きな課題となっていきます。子ども時代に、家族で祖父を介護していた体験を持つ井上氏。どうしても家庭内の問題になりがちな介護を会社や社会全体でサポートする重要性を強く訴えます。

「介護はどうしても家族の負担が大きくなりますが、それをオープンにしにくい側面があります。そのため、課題がどこにあり、どうサポートしてよいかがわかりにくくなってしまうのです。まずは社員がひとりで抱え込まず、少しでも相談できる場を会社の中につくっていくことが大切です」

介護で煮詰まったときに、話せる場があることは大きな支えとなります。会社としても、具体的な相談を聞くことで情報を収集でき、必要なサポートや制度を検討するという次のアクションへとつなげていけます。

「介護は個別の事情に合わせたケースバイケースの対応が求められます。だからこそ、社員が会社に相談できる土壌を社内につくっていきたいですね」

各社の実情をリアルに語り合うことの価値

「GCNJ サミット2025」では17社の企業のトップが一堂に会し、自社の事例を交えながら多様性の推進について語り合いました。「業種・業界を超えたトップ同士が顔を合わせて議論する機会は非常に貴重」だと、井上氏はその意義を大きく評価します。

「制度やデータを見るだけではわからない、各社の取り組みのリアルや考え方を生の声で聞けたのは大変参考になりました。どの企業も試行錯誤を繰り返しながらも、積極的に取り組んでいる様子に感銘を受け、弊社でもより一層、積極的に取り組んでいかねばならないと改めて決意しています」

このような「GCNJコレクティブ・アクション2030」の価値を広く認知してもらい、参画企業を増やしていくことも、社会全体の多様性の加速に大きく貢献します。

「どの企業も多様性が重要だということは、理解しているはずです。『GCNJ サミット2025』のような場で企業同士が直接つながることで得られるメリットは計り知れません。信頼あるトップ企業が先陣を切って参加したことで、ほかの企業の『GCNJコレクティブ・アクション2030』への関心も高まっているはずです。より多くの企業に参画してもらうためにも、今回のサミットの成果をしっかり発信していくことが大切だと思います」

これからの日本の社会はより多様性を受け入れることで、誰もがウェルビーイングに働いて暮らせる世界を目指していかなくてはなりません。

「多様性を実現していくには、段階があります。今は、会社が制度の充実や意識改革を進めて多様性に取り組んでいる真っ只中です。その次は自社と取引先など企業同士の連携を深めていく段階で、『GCNJ コレクティブ・アクション2030』もその場づくりのひとつです。そして、その先にはあらゆる人々の多様性を受け入れる、幸福度の高い社会への成長が待っています」