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GCNJサミット2025
〜Social Change by Equity〜
イベントレポート

GCNJコレクティブ・アクション2030

17社が署名、2030年に向けたアクションプランを宣言!
企業のトップが公平な働き方を目指して意見交換

ラウンドテーブル参加17社のトップの皆様との集合写真

2025年1月28日、東京都渋谷区青山の国連大学本部ビルにて、「GCNJ サミット2025~Social Change by Equity〜」が開催されました。日本を代表する23社が賛同しており、この日はその中から代表して17社のトップが署名式に臨み、各社のアクションプランを宣言。さらに、トップによる意見交換や事例発表を行いました。

第一部では、株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長小室淑恵氏の基調講演、会員を代表して積水ハウス株式会社およびMS&ADインシュアランス グループ ホールディングス株式会社の2社が取り組みを発表。そして第二部では参加17社トップによる非公開のラウンドテーブルで意見交換を行いました。

当日の模様をダイジェストでお伝えします。

「GCNJコレクティブ・アクション2030」の大きなミッションは、「誰もがWell-beingを実感できる社会」の実現です。そのために賛同企業では、2つの課題の解決に向けて、具体的なアクションプランを制定し、実際に実現に向けて動き出します。

最初に各社、アクション宣言書に調印をし、共にこれから動き出していこうという思いを新たにしました。

宣言書に署名をする社長の皆様

第一部 基調講演

「人口減少経済下でも、業績向上が実現する多様な人材の力を活かせる経済戦略とは」

株式会社 ワーク・ライフバランス
代表取締役社長 小室 淑恵 氏

公立学校200校、民間企業3000社、7省庁の働き方改革コンサルティング実績を持ち、残業を減らして業績を上げる手法に定評がある。残業削減した企業では業績と出生率が向上し、学校では、持ち帰り残業も削減し、残業を半減させながらも子どもに向き合う時間が増加する成果が出ている。文部科学省「中央教育審議会」委員、「産業競争力会議」民間議員など複数の公務を歴任。2児の母。

小室淑恵氏プロフィール

日本は人口ボーナス期から人口オーナス期に突入。
男性の働き方改革による夫婦の共働きと少子化対策が経済の再発展への鍵

人口オーナス期における再発展に向けた基本的な考え方

日本は、週49時間以上の就業者比率が先進国の中で1位でありながら、OECD加盟諸国の労働生産性は先進国中31位です。つまり、先進主要国の中で最も時間をかけて仕事をし、生み出す付加価値は最も低い国です。

小室 淑恵 氏(以下小室)
「日本は、長時間労働をすることにより勝ってきた成功体験があります。しかし、生産年齢人口が多く高齢者比率の低いボーナス期を過ぎ、人口オーナス期に入ってきた今、再発展していけるかどうかは、ある2つのことを徹底してやれるかどうかにかかっています」

1 現在の労働力を最大確保するために、女性や障がい者、介護者が労働参画できる職場・働き方を生み出すこと

小室「日本は女性や障がいを持つ方、親の介護と両立する方が15歳から65歳の生産年齢人口ゾーンに入っているのに参画できていません。日本は女性の教育と健康で世界トップの国であるにもかかわらず経済に参加できていない。労働参画できる職場の創生や働き方改革が急務です」

2 未来の労働力を確保すべく、夫婦の共働きと少子化対策の両立

小室「孤独な育児が妻のトラウマとなり、2人目を諦めてしまう傾向があります。産後うつの防止のためにも、まとまった7時間睡眠や朝日を浴びて散歩をする時間が取れるよう、夫が夜中の授乳等を手伝える環境を生み出す必要があります。また、夫婦の愛情度は産後すぐの夫の育児参画の度合いに最も関連するため、より幸せな家族づくりにも男性の働き方改革が不可欠です」

企業と日本の経済成長を加速する真の働き方改革

基調講演中の小室淑恵氏

長時間労働可能者が評価を得る働き方から、定時退社が前提の職場へ移行し、時間あたりの生産性で評価される組織にしていくことで、女性も昇格を希望するようになり、若手男性や学生からも選ばれる企業となり、採用でも優位になるといいます。

小室「多様な人材が安心して仕事をパス回しできる心理的安全を確保し、各職場が主役となり、従来の仕事の仕方を見直すことができる「内発的働き方改革」をしていくことが必要です」

第一部 企業取組発表

男性育休取得促進の取り組みについて、参加企業を代表して積水ハウス株式会社、MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス株式会社の2社が自社の取り組みについて発表しました。

154の賛同企業・団体と共に男性育休を考えるプロジェクト「IKUKYU. PJT」を実施

積水ハウス 仲井嘉浩社長

積水ハウス株式会社
代表取締役社長執行役員兼CEO
仲井 嘉浩 氏

仲井嘉浩氏は、まず、積水ハウスの人的資本経営の基本方針について「従業員の自律×ベクトルの一致」であると語りました。同時に、従業員と話をすると「自律に対するハードルが高い」という話が多く聞かれるといい「自律とは難しいことではなく、自分のライフスタイルを実現するための行動を、自分で決めて、責任を持つことである」と伝え、自律をしようとする社員の全力支援に徹する方針です。

仲井氏は、「2018年にスウェーデンを訪問した際に、ベビーカーを押している人の大半が男性であり、3カ月の男性育休を取得する事が当たり前になっているという話に感銘を受けました。帰ってすぐさまダイバーシティ推進部に相談し、3カ月の男性社員の育休取得制度の制定を提案した」と言います。

2018年9月1日より、同社では3歳未満の子どもを持つ社員全員に対して、育児休業1カ月以上の取得を推奨し、最初の1カ月を有給とし、最大で4分割での取得を可能としました。
取り組みをはじめてから、2024年12月末時点で、対象となる2256名の社員が制度通りに100%、3年以内に1カ月以上の男性育休取得を完了しています。

男性の育休取得の効果は絶大で、「パートナーの方へのアンケートからも90%以上が『よかった』という回答が得られていますし、それぞれの職場のチームワークが醸成されました。採用にもいい影響があるのではないか」と仲井氏。

2019年には「男性育休フォーラム」を開催し、その年以来「男性育休白書」を毎年継続して発表。2024年9月時点で、男性育休を考えるプロジェクト「IKUKYU. PJT」に154社の企業・団体が賛同しています。仲井氏は「『男性が当たり前に育休を取得できる世の中にしていきたい』という想いに共感していただける皆様とぜひ一緒に盛り上げていきたい」と語りました。

育休取得率は100%、連続1カ月の取得が課題

MS&AD舩曵 真一郎社長

MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス株式会社
取締役社長グループCEO
舩曵 真一郎 氏

舩曵真一郎氏は2021年の社長就任後、男性社員から「転勤先の地方都市で実家の親の手助けを期待できない。そんな中、ワンオペ育児で妻のストレスが溜まっていて関係性も微妙だ」という話を聞き、すぐに社員アンケートを実施。国内外の転勤が多いこともあり、同じ意見が多数聞かれたそうです。

これまで「日本の少子化は国の問題だと思っていたが、社員一人ひとりの悩みは国民全体の悩みと同じである」と気付き男性育休1カ月取得を導入。最初は、昇進への影響や取引先への影響などを心配する声も上がったといいますが、「やってみると、ステークホルダーの理解も得られやすかった」といいます。現在取得率は100%ですが、連続1カ月の取得が課題だといい、会社全体の業務の抜本的な見直しを図っています。

また、舩曵氏は少子高齢化の解決策として、1人目の子どもは100万円、2人目は200万円をお祝い金として払うことを企画しました。ところが「お金よりも、職場への遠慮や出産後に居場所がなくなることに不安がある」という社内からの声を受け、2023年に育休職場応援手当(祝い金)を創設しました。舩曵氏は「社内外で評判になり、メディア取材や少子化対策担当大臣ら、社外からの反応も大きかった」と語ります。

さらに、「19時退社では家事と仕事が両立できない」など、育児や介護中の社員との対話による気づきを得て、人的資本を充実させるためには、社員が仕事と育児や介護との両立を展望できることが重要であると考え、定時退社を前提とした働き方を徹底しました。保険事故は17時以降も発生するため、取り組みは道半ばではあるものの、個人から会社全体まで、プロセスの見直しを行うなど、 18時には帰れるようになってきています。

舩曵氏は「今後は、高齢化対策にも目を向け、介護休暇の制度や手当について取り組んでいきます」と語りました。

第二部 企業トップによるラウンドテーブル

「GCNJサミット2025 〜Social Change by Equity〜」のテーマである、目指す姿や課題に対して参加17社のトップが非公開で率直な意見を交わしました。

国連大学本部ビル エリザベス・ローズ会議場のラウンドテーブルにて議論を交わす17社のトップのみなさん

賛同各社が、自社の取り組みについて発表。リモートワークや育児休暇、女性活躍推進、風土醸成への取り組みや成果、これからの課題などについて共有しました。

リモートワークについては「フリーアドレスの採用により出社日をチームリーダーに一任すること」や、「残業を前提としない働き方を目指して一定の時刻に従業員のPCをシャットダウンさせる」「対面が必要なことは徹底してデジタルツールを活用」など、各社の取り組みが伝えられました。

モデレーターのGCNJ理事 本島なおみ氏

男性の育児休暇の取得については各社、制度の活用率や活用の質を高める取り組みが語られました。風土改革については「社員が自由に発言できる場をいかに作るか」「職場ごとに選んだアンバサダーに集まってもらいディスカッションをし、次の100年に向けての挑戦を考え実践している」などの取り組みが発表されました。

非公開でのラウンドテーブルということもあり、失敗談からのリカバリーについての話もあり、非常に意義のある時間となりました。
今後も共に公平な働き方をつくっていく賛同企業の加入を歓迎し、より活発な議論とアクションを目指していきます。

※ラウンドテーブルご参加者(円卓座席順)

  • 積水ハウス株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 仲井嘉浩様
  • MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社 取締役社長 グループCEO 舩曵真一郎様
  • 株式会社東芝 代表取締役社長 島田太郎様
  • 株式会社大和証券グループ本社 大和証券株式会社 代表取締役社長 荻野明彦様
  • ANAホールディングス株式会社 代表取締役社長 芝田浩二様
  • 住友林業株式会社 代表取締役社長 光吉 敏郎様
  • ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川 潤一様
  • アスクル株式会社 代表取締役社長 CEO 吉岡晃様
  • キッコーマン株式会社 代表取締役社長CEO 中野祥三郎様
  • 株式会社JTB 代表取締役 社長執行役員 山北 栄二郎様
  • 株式会社サンゲツ 代表取締役 社長執行役員 近藤 康正様
  • 三井住友トラストグループ株式会社 代表執行役社長 高倉 透様
  • 株式会社ポーラ・オルビスホールディングス 代表取締役社長 横手 喜一様
  • 株式会社NTTデータグループ 代表取締役社長 佐々木裕様
  • 株式会社明電舎 代表取締役 執行役員社長 井上晃夫様
  • BIPROGY株式会社 代表取締役社長 CEO CHO 齊藤昇様
  • 株式会社クレアン 代表取締役会長 薗田綾子様

※他、GCNJサミット時の賛同企業(6社)

  • 株式会社セブン&アイ・ホールディングス
  • 太陽化学株式会社
  • 株式会社電通
  • マブチモーター株式会社
  • 三菱ケミカルグループ株式会社
  • 株式会社りそなホールディングス